PRP療法(PRP-FD療法)

再生医療とは

再生医療とは、ダメージを受けて損傷した組織や臓器を、よみがえらせることを目的とした医療です。再生医療の分野にはバイオ技術が大きく関わっており、胚性幹細胞(ES細胞)が注目された後に、京都大学の山中伸弥教授によって誕生したiPS細胞がノーベル医学賞を受賞したことで、大きく注目されてきました。
また、米国の大リーグで活躍する田中将大氏や大谷翔平氏が、肘靱帯の損傷時に手術を回避して治療を行ったことで話題になった、PRP療法も再生医療の一分野として注目されており、整形外科分野の中で、プロ選手やチームなどが期待と信頼を寄せる医療技術となっています。

靭帯や関節に有効な再生医療

ダメージを受けて損傷したり傷ついたりした組織を自身で再生させていく能力を自己再生能力と言います。たとえばケガを負ってしまった時に、だんだんと傷の部分に新しい組織ができあがって傷口を修復していく様子は誰でも体験したことがあると思います。その組織再生に重要な役割を果たしているのが、血液の中に含まれる血小板に含まれる成長因子です。
しかし、関節の中にある軟骨や靱帯には血管が通っていませんので、この血小板による自己再生能力をうまく発揮することができません。
そのため、人工的に抽出した血小板の成分を軟骨や靱帯に注入することで、自己再生能力を引きだそうとするのが、整形外科分野における再生医療の一つとして注目される技術となっています。

再生医療の種類

PRP療法

PRP療法は、患者様自身の血液をごく少量採集し、その血液を遠心分離装置にかけて血小板の多く含まれる部分を抽出し、関節内で損傷を受けた軟骨や靱帯といった組織に、注射によって投与し、本来血液による栄養供給が行われないそれらの組織に、血小板中の成長因子を送り届け、組織の修復と再生を促そうとする治療のことです。この治療をPRP(Platelet-Rich Plasma:日本語では多血小板血漿)療法と言います。
変形性関節炎の治療では、完全に軟骨組織が失われてしまっているケースではまだ有効な治療例が報告されていませんが、軟骨組織がある程度残っているケースでは痛みが軽快した例が報告されています。
また野球肘やテニス肘といったスポーツ障害では、炎症を起こしている部分の症状軽減例も報告されており、将来の根治治療への発展が期待されています。

APS療法

APS療法は、血液から血小板成分を抽出したPRPから、さらに成長因子の部分のみを抽出し、自己再生能力を活性化させようとする治療法で、Autologous Protein Solutionの略からAPS療法と呼ばれており、その高い効果から次世代PRP療法と呼ばれることもあります。

PRP-FD療法

PRP-FD療法は、PRPによって採集した血液の血小板部分を、さらにフリーズドライ技術によって濃縮し保存が利くようにしたものを患部に注入する再生療法の一つで、PRP-Freeze Dryの略語です。PRPを冷凍乾燥することによって、血小板がさらに高濃度に圧縮され、その中に含まれる成長因子も高濃度になることで、自己再生能力を大きく引き出すことが期待できます。また、フリーズドライ加工することによって、有効成分の経時劣化が抑えられるようになり、常温で約6か月は高い効果を維持したまま保存することが可能です。フリーズドライにあたっては、患者様の血液を採集し、厚生労働省に認可された専門施設に依頼し2~3週間で膝関節等の再生に使用できるようになります。

PRP療法のメリット

  • ご自身の血液を採血し、そこから有効成分を抽出するため、感染、免疫反応といった副作用や合併症のリスクが極めて低く抑えられます。
  • ご自身の血液を採血し、調整したものを注射で投与するだけなので、入院も手術も不要な外来治療で完結できます。
  • 注射針を刺すだけの治療ですので、治療痕が残りにくく、繰り返しの治療が可能となります。
  • 一回の治療で、効果がうまく発揮できた場合、長期的に治療効果を維持することが可能で、高濃度抽出のAPSキットでは2年間、関節外PRPのGPSⅢでは半年から1年といった効果持続の報告もあります。

PRP療法のデメリット

  • 患者様ご自身の血液の状態によって、思ったような効果が得られないケースもあります。
  • 健康保険が適用されず、自由診療となります。
  • 採血時や注射による投与時に痛みや内出血を起こしたり、患部が腫れたりすることがありますが、いずれも一時的なものです。もし腫れが強い場合は患部のアイシングをお奨めしています。
  • 最新医療ですので、治療効果に関する臨床データが従来の治療法に比べて少なく、治療効果の確率や持続時間の平均といった点について、しっかりとした統計数値による効果の予測を把握しにくい傾向があります。

主なPRP療法対象疾患

変形性膝関節症

変型性膝関節症は、加齢などの原因により膝関節中の軟骨組織や滑液などの関節内組織が損傷を受け、膝関節が変形し、軟骨成分がすり減って歩行が困難となるような疾患です。症状の程度によって様々な治療法がありますが、軟骨成分が大きくすり減っていながら、手術を避けて保存療法を行いたいケースでは、PRP療法によって軟骨組織の再生を分子レベルで活性化して行く効果が期待できます。

変形性膝関節症

テニス肘、野球肘、ジャンパーズ・ニーといったスポーツ関連疾患

本格的にスポーツをしたり、趣味のスポーツでも自己流のフォームで関節や筋肉などに負荷をかけ続けたりすると、いつのまにか組織自体の再生能力を超えてしまい、組織が変性することがあります。そうなると、なかなか治りにくい状態となり、スポーツ活動そのものが続けにくくなります。
そんなケースでもPRP療法によれば手術などを行うことなく、組織自体の自己再生能力を高めて、正常に近い組織に戻していく効果が期待できます。
また、スポーツ外傷によって捻挫・肉離れ等、筋肉や関節に外傷を負ったケースでも、PRP治療を行うことで、早い時期に現場復帰する可能性も期待できます。

スポーツ整形外科

PRP療法を受けられない方

  • 感染症に罹患している
  • 免疫抑制剤を服用している
  • 薬剤過敏症である
  • 発熱している
  • がんの治療中である
  • 抗凝固薬を使用している

など

PRP療法の治療の流れ

1

採血した患者様の血液を使用してPRPを生成します。所要時間は30分程度です。

2

生成したPRPを患部に注射器で投与します。ピンポイントに患部に注入しだんだん周辺までPRPを浸透させるように施術します。その際痛みを伴うことがあります。

3

痛み方は個人個人で異なります。しかし、かなりの痛みを感じる方でも10分程度お休みいただくことで、ご自身で歩いて帰宅することが可能になります。

4

注射が終われば、治療完了です。注射部分を固定したり安静にしたりする必要はありませんが、激しい運動についてはお控えいただく必要があります。

5

作用のメカニズムとして、炎症を起こして患部の修復を促しています。そのため痛みを強く感じる方には鎮痛薬を処方しますが、最低限に抑えています。

PRP療法後の経過について

治療後3~4日

治療後3~4日程度は強い痛みを感じます。炎症を起こさせることで組織の修復を図っていますので、この間の数日は我慢の時期です。

治療後1週間

治療後1週間程度で、激しく感じていた痛みはほとんど治まり、組織再生の効果を感じ始めます。スポーツ活動の再開も可能です。しかし急激にきつい運動に入るのではなく、だんだんとペースを上げていくことが大切です。

治療後1か月

一か月以上を経過すると、痛みはまず感じないようになります。組織再生の効果もしっかりと感じられ、イメージ通りに身体に動かせるようになってきます。

PRP療法の費用

  費用(税込)
PRP療法 約15万円

PRP療法のよくある質問

どのぐらいの時間で効果が感じられますか?

個人差が多いため、はっきりしたことは言えませんが、早ければ2~3週間程度、遅くても2か月程度で効果を実感していただけることが多いようです。

治療の効果はどの程度持続しますか?

新しい治療法で、しっかりとした統計データがまだ集まっていません。そのため個人差が大きいのですが、これまで報告されたデータでは1年後あたりが効果のピークになっています。中には2年間痛みが出なかったという報告もあります。

どの程度の確率で効果を得られますか?

9割程度の方が痛みの軽減などを感じるようになるという報告があります。

採血してから注射が可能になるまでどのぐらいかかりますか?

単純なPRP療法の場合30分程度です。PRP-FD療法では、厚生労働省の認可を受けた施設でフリーズドライを行いますので、3週間頂いております。

PRP療法を行うためにどのぐらいの血液が必要ですか?

およそ50ccです。

ヒアルロン酸やステロイドの注射療法とどこが違うのですか?

ヒアルロン酸やステロイドなどは限定的な効果ですが、PRP療法では濃縮された血小板中の成長因子が自己治癒力を最大限に引き出しますので、長期的な改善効果を期待することが可能です。

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